交通事故用語集

  • 債務不存在確認訴訟
    読み方さいむふそんざいかくにんそしょう
    意味通常は、被害者の方から加害者に対して損害賠償請求訴訟(給付訴訟)を提起する。ところが、被害者は訴訟外では請求をしているが、損害賠償請求訴訟を提起しない場合、加害者の方から、自分には債務が存在しない(あるいは、いくらを超えては債務は存在しない)ことを確認して欲しいという裁判を起こすこと。
  • 自覚症状
    読み方じかくしょうじょう
    意味患者自身が感じている痛みなどの症状のこと。後遺障害診断書を作成してもらう際には、医師にきちんと説明して、自覚症状の欄に記載してもらう必要がある。
  • 時効
    読み方じこう
    意味民法では、権利を行使しない場合には、一定の年数を経過するとその権利は消滅すると規定しているが、これが消滅時効である。交通事故の場合、被害者は、加害者に対して不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求をするが、この損害賠償請求権は、原則として事故から3年を経過すると時効消滅する。
  • 時効中断の承認書
    読み方じこうちゅうだんのしょうにんしょ
    意味債務者が作成する、時効中断を承認する書面。不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条)は、加害者及び損害を知った時から3年間で時効により消滅してしまうが、なお示談交渉中であるなどの場合には時効中断の手続を採っておく必要があるため、時効中断の承認書が作成される。
  • 事前認定
    読み方じぜんにんてい
    意味加害者が契約している任意保険会社が一括払いの手続を採っている場合に、任意保険会社の賠償額の支払前に任意保険会社を通じて行う後遺障害等級認定のことをいう。 任意保険会社が後遺障害等級認定を自賠責調査事務所に依頼し、調査事務所がその結果を任意保険会社に通知し、任意保険会社がその結果を被害者に伝える、という流れになる。任意保険会社の一括払い請求では、任意保険会社が自賠責保険の分もまとめて支払い、後で自賠責保険会社に求償するので、自賠責での等級認定と違った全額を支払ってしまうと求償額が少なくなるおそれがあるので、一括払いする前に等級認定をしておく必要がある。
  • 自損事故
    読み方じそんじこ
    意味自動車を運転中にハンドル操作を誤り,電柱に衝突し負傷した場合(相手のない事故)や,居眠り運転でセンターラインをオーバーして相手方車両と正面衝突をして重傷を負った場合(相手はいるが、運転者に100%の過失がある事故)など、運転者に100%過失がある事故のこと。 自損事故の場合,運転者本人の傷害や死亡については,自賠責保険や任意保険の対人賠償保険からは保険金が支払われない(ただし,同乗者はその自動車に付いている各保険から補償が受けられる場合がある。)。
  • 示談
    読み方じだん
    意味交通事故による損害賠償額について、裁判(民事訴訟、民事調停)によらずに当事者間の話し合いによって紛争を解決すること。この示談の内容を書面に記載したものを示談書という。
  • 示談代行サービス
    読み方じだんだいこうサービス
    意味任意保険会社が保険契約者に代わって、事故の相手方と示談交渉を行うサービス。 示談代行サービスは、任意保険のうち、自家用自動車総合保険(対人事故および対物事故)、自動車総合保険(対人事故に限る)の加入者に対して適用されるもので、交通事故を起こした加害者や運行供用者に代わって、任意保険会社が被害者と示談交渉をしてくれる。これら以外の場合は、加害者は自分で被害者と示談交渉しなければならない。
  • 実況見分調書
    読み方じっきょうけんぶんちょうしょ
    意味警察官が,事故現場の状況を調べて記載した書類。
  • 自動車損害賠償責任法
    読み方じどうしゃそんがいばいしょうせきにんほう
    意味自動車事故における損害賠償の責任や自賠責保険(共済)制度を規定した法律。 自賠責保険では、運行供用者責任による損害に対して一定額の保険金が支払われる。事故の被害者からの請求も認められており(被害者請求)、自動車の保有者が明らかでないなどの場合のために政府による救済制度も設けられている(政府保障事業)。 自賠法という。
  • 自賠責支払基準(自動車損害賠償責任保険支払基準)
    読み方じばいせきしはらいきじゅん
    意味自賠責保険の保険金等の支払基準。自賠責保険では、支払限度額が設けられており、死亡による損害は最高3000万円まで、傷害による損害は最高120万円まで、後遺障害による損害は、介護の要否・程度や後遺障害の程度により、後遺障等級表に従い、最高4000万円まで支払われる。
  • 自賠責損害調査事務所
    読み方じばいせきそんがいちょうさじむしょ
    意味全国の都道府県庁所在地等に設置され、保険会社からの依頼に基づいて自賠責保険の損害調査を行い、その結果を保険会社に報告する組織。損害保険料率算出機構の下部組織。
  • 自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)
    読み方じばいせきほけん
    意味交通事故による被害者を救済するために、加害者が負担する金銭的な賠償額を補てんすることにより、最小限の対人賠償を確保することを目的として、自動車及び原付について、加入を義務づけている強制の損害保険。 自動車の運行によって他人を死傷させた場合の人身事故による損害に対して支払われる保険で、物的事故(物損)は対象にならない。被害者に3割を超える過失がなければ支払額が減額されることはない。
  • (財団法人)自賠責保険・共済紛争処理機構
    読み方じばいせきほけん・きょうさいふんそうしょりきかん
    意味自賠責保険の支払いについて生じた紛争につき、公正かつ適正・迅速に解決することを目的として設立された裁判外紛争処理機関。対象となる紛争は、被害者又は加害者からの請求に対して、自賠責保険会社からの支払又は不払いの通知があった事案や、任意の自動車保険について、自賠責保険の判断が示されている事案。専門的な知見に基づいて迅速、公正中立な紛争解決を行うため、交通事故賠償の専門的知識を有する弁護士、医師、学識経験者が、事案の性質に応じて紛争処理委員に指名される。手続は、原則として非公開であり、意見の陳述や立証は原則として書面による。
  • 自賠責保険審査会
    読み方じばいせきほけんしんさかい
    意味自賠責保険の請求がなされた事案のうち、高度な専門的知識を要求され判断が困難な事案や異議申立事案(調査結果や支払われた保険金又は損害賠償額に不服があるために再度請求が行われた事案)は、審査の公平性・客観性を確保するため、外部の専門家が参加する自賠責保険審査会で審査が行われる。損害保険料率機構・自賠責損害調査センターに置かれている。 このうち、死亡事案等で全く支払われないか、減額される可能性がある事案等は、有無責等の専門部会において審査が行われ、脳外傷による高次脳機能障害に該当する可能性がある事案等は、後遺障害の専門部会において審査が行われる。ただし、審査会に回らないこともある。
  • 死亡慰謝料
    読み方しぼういしゃりょう
    意味交通事故により被害者が死亡してしまった場合には、死亡自体に対する慰謝料を請求できる。これは被害者(死亡者)固有の損害と考えられているので、それとは別に遺族から慰謝料請求できる場合もある。
  • ジャクソンテスト
    読み方ジャクソンテスト
    意味スパーリングテストと同様、神経根に障害があるかを調べる神経学的テストの一つ。むち打ち症、頸椎捻挫等等の後遺障害の有無を調べるためのもの。頭を後屈させ,上から押し付けたときに痛みやしびれが出るかをテストするというもの。
  • 車両保険
    読み方しゃりょうほけん
    意味自分の車が他の車との事故や単独自損事故、盗難等で壊れた場合に、自分の車両に対して保険金が支払われるもの。
  • 自由診療
    読み方じゆうしんりょう
    意味健康保険を使った診療ではない医療。そのため、治療費の全額を自己負担する必要がある。医療機関は治療費を裁量で決定することができるので,治療費は健康保険等を使用した場合と比較して高額となる。保険診療の場合,窓口で治療費の3割を自己負担分として支払う必要があるが、残りの7割は健康保険等が医療機関に対して支払いをする。
  • 就労可能年数
    読み方しゅうろうかのうねんすう
    意味交通事故に遭わなかった場合に、その被害者が、残りの人生であと何年間稼働することが可能であったかの想定年数。通常は67歳までとされる。
  • 傷害慰謝料
    読み方しょうがいいしゃりょう
    意味事故により負傷し、通院や入院をせざるを得なくなったときに、その精神的苦痛を慰謝するために支払われる慰謝料。入通院慰謝料ともいう。
  • 傷害保険
    読み方しょうがいほけん
    意味被保険者が急激かつ偶然な外来の事故によって身体に傷害を負ったときに保険金が支払われる保険。
  • 消極損害
    読み方しょうきょくそんがい
    意味交通事故に遭っていなければ、被害者が得ていたであろう利益。
  • 使用者責任
    読み方しょうしゃせきにん
    意味会社の営業車が仕事中に事故を起こして被害者に怪我をさせてしまった場合、事故を起こした運転手が責任を負うのはもちろんであるが、その雇用主である会社も賠償の責任を原則として負うこと。
  • 症状固定
    読み方しょうじょうこてい
    意味傷害の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その傷病の症状の回復・改善が期待できなくなった状態。言い換えれば、傷害の症状が、これ以上治療を続けても改善しないと判断された状態。 症状固定を認めると、これ以上治療の必要がないと認めたことになるので、症状固定以後に治療を受けた分は、損害賠償の対象にはならない。
  • 鍼灸
    読み方しんきゅう
    意味鍼灸とは、身体に鍼や灸を用いた刺激を与えることで、多様な疾病への治療的な介入や健康増進を目指す医療技術である。交通事故でむち打ちになった場合、鍼灸治療院に通うことがあるが、鍼灸師は医師ではないので、鍼灸治療が医師の指示のもとに行われない限り、原則として、賠償の対象とならない。但し、実務上は、明確な医師の指示がない場合でも、その効用が認められる場合などは認められるケースもある。 戦後、それまで営業鑑札であったはり・きゆうの免許が国家資格となり、現在では3年以上養成機関で学ぶことが、「はり師」と「きゅう師」の国家試験受験要件となっている。 
  • 神経症状
    読み方しんけいしょうじょう
    意味めまい,動悸,ふるえ,しびれなどの神経系の障害を指す。
  • 人身事故
    読み方じんしんじこ
    意味人の生命や身体に損害が発生した場合。物損事故との違いは、①人身事故の場合には、自賠責にて最低限の補償は確保されるが、物損事故には自賠責の補償はない。②物損事故の場合には被害者が加害者の故意過失を証明する必要があるが、人身事故の場合には、加害者が無過失を証明しない限り、被害者に対して賠償責任を負う。③人身事故の場合には、加害車両の運転者だけでなく運行供用者(社有車なら会社)にも損害賠償を請求できる。
  • 人身傷害補償保険
    読み方じんしんしょうがいほしょうほけん
    意味交通事故で被保険者が死傷した場合に、加害者の賠償責任の有無に関わらず、被保険者が自身が契約している任意保険によって、その損害を補償してもらえるという保険。被保険者の過失に関係なく支払いが受けられるので、加害者からの賠償金が過失相殺によって過失分を差し引かれてしまった場合でも、その分を受け取ることも可能。搭乗者傷害保険よりも補償の範囲が大きくなっているが、搭乗者傷害保険とは違って、加害者から過失相殺されない全面的な賠償を受けた場合にはこの保険金を受け取ることはできない。
  • 人損
    読み方じんそん
    意味人身的損害。
  • 診療報酬明細書
    読み方しんりょうほうしゅうめいさいしょ
    意味医療機関が健康保険組合などに対し保険診療の報酬を請求する際に必要な書類。診療期間、診療実日数、入通院日数の記載、行われた医療行為や使用された医薬品の明細及び診療点数と金額が記載されており、レセプトと呼ばれている。診療報酬明細を見れば、医療機関でどのような処置が行われたか、治療費がいくらかかったのかが分かる。
  • スパーリングテスト
    読み方スパーリングテスト
    意味ジャクソンテストと同様、神経根に障害があるか否かを調べる神経学的テストの1つ。むち打ち症、頸椎捻挫等等の後遺障害の有無を調べるためのもの。頭を右後ろ・左後ろに傾け,押し付けたときに痛みやしびれが出るかをテストする。
  • 生活費控除(率)
    読み方せいかつひこうじょりつ
    意味 交通事故による損害を算定する上で、生活費を控除しなければ不公平となる場合にどのような率で控除すればよいかということ。人は得られた収入から生活費を使用するのであるから、死亡による逸失利益を計算する場合に、その死亡者が将来得られるであろう収入のすべてが損害だということとなれば、不公平である。この生活費を控除するためにどのような割合を考えるべきかの問題である。
  • 整骨院
    読み方せいこついん
    意味整骨院と接骨院は同じ。柔道整復師という国家資格を持つ者が施術を行うところ。厚生労働大臣認可の専門学校や大学で専門知識を身につけ、卒業時に財団法人 柔道整復研修試験財団が行う国家試験の受験資格が与えられる。 整骨院に通う場合も、鍼灸の場合と同様で、原則として医師の指示がないと賠償の対象とならない。しかし、症状の軽減に有効性が認められる場合には、明確な指示がなくても、認められる場合がある。 なお、整体院は、国家資格がない。そのため健康保険は使えないし、治療内容に制限はない。整体での施術費用は、損害賠償額には含められない。
  • 政府保障事業
    読み方せいふほしょうじぎょう
    意味加害者が特定できない「ひき逃げ事故」や、有効な自賠責保険契約が締結されてない「無保険車」による事故の場合、自賠責保険では被害者の救済は図れない。このため、政府(国土交通省)が自賠責保険料(共済掛金)の一部を使い、加害者に代わって被害者の受けた損害を保障している。
  • 脊髄損傷
    読み方せきずいそんしょう
    意味「脊髄」とは、脳から背骨に添って延びている神経線維の束で、まわりを脊椎と呼ばれる骨に取り囲まれている。首の部分を「頚髄」、胸の部分を「胸髄」、腰の部分を「腰髄」という。それぞれの周りの骨は、「頚椎」、「胸椎」、「腰椎」と呼ばれている。脳から送られるさまざまな指令は、この「脊髄」を通って全身に枝分かれし、各神経に送られていくが、交通事故などによって強力な外力が加わり、脊椎に脱臼骨折がみられると、多くの場合、脊髄にも圧迫や挫創が起こり、その結果、脊髄も損傷されてしまう。こうした状態を「脊髄損傷」という。
  • 積極損害と消極損害
    読み方せっきょくそんがい、しょうきょくそんがい
    意味交通事故の被害者が被った物的損害は、積極損害と消極損害の2つに分けられる。 積極損害とは、交通事故に遭ったことにより、被害者が支払わなければならなくなった損害。治療費、付添費用、将来介護費、雑費、通院交通費・宿泊費、装具・器具等購入費などがあるす。積極的な(被害者が実際に金銭を支払わなければならないこととなる)損害という意味。 消極損害とは、事故にあったため将来得られるであろう利益が得られなくなったもの。休業損害、後遺障害による逸失利益、死亡による逸失利益がある。
  • 全損
    読み方ぜんぞん
    意味交通事故によって車が修理不可能な状態になること。修理自体は可能でも、修理費が事故車の時価額を上回る場合を経済的全損という。経済的全損の場合、実務では、事故車の時価額しか賠償の対象とされない扱いとなっている。
  • 素因減額
    読み方そいんげんがく
    意味素因とは、被害者の心因的要因及び身体的要因(既往症等)を意味する。一般に損害の拡大について被害者の素因が寄与している場合には、過失相殺の考え方を類推して損害賠償額を減少されるときがある。
  • 相当因果関係
    読み方そうとういんがかんけい
    意味加害者の行為(当該交通事故)と被害者の損害の間に、社会通念上相当な因果関係があること。加害者の行為(当該交通事故)から被害者の損害が生じることが、通常発生するであろうという関係にあること。
  • 損益相殺
    読み方そんえきそうさい
    意味被害者が交通事故を原因として何らか利益を得た場合、その利益を交通事故の損害の塡補となったと評価して損害から利益額を控除すること。
  • 損害調査
    読み方そんがいちょうさ
    意味自賠責保険の請求手続きでは、保険請求された後、損害調査事務所で損害調査が行われる。調査結果は、最終的には、自賠責保険の適正な基準料率算出の資科として用いられる。
  • 損害保険料率算出機構
    読み方そんがいほけんりょうりつさんしゅつきこう
    意味「損害保険料率算出団体に関する法律」に基づき設立された特殊法人であり、保険料率の算出の参考資料とされる参考両立などの算出・提供、自賠責保険の損害調査などを行う組織。旧・自動車保険料率算定会である。